矢野経済研究所は、国内のテレマティクス保険市場の調査を実施。2021年度の国内個人向けテレマティクス保険市場は2260億円、自動車保険市場全体に占める割合は5.3%どまりであることが明らかになった。
テレマティクス保険とは、損害保険会社が自動車に搭載された通信機器から得られる走行距離やアクセル、ブレーキの強さなどの運転挙動の情報をもとに、保険料の割引や安全運転支援などを提供する保険商品やサービス。通信機器にはコネクテッドカーや通信型ドライブレコーダー、スマートフォン、などがある。
調査は損害保険会社、オートリース会社、IT事業者等を対象に、2022年1月から5月までの期間、同社専門研究員による直接面談ならびに文献調査を併用して行った。
調査結果によると、2021年度の国内個人向けテレマティクス保険市場は2260億円と推計した。近年、あおり運転を回避するツールとしてドライブレコーダーが注目されている。ただし、運転者自身が市販のドライブレコーダーを取り付けるケースも多く、テレマティクス保険の加入増には結びついていない。現状では、損害保険会社の提供するテレマティクス保険への認知度が低く、自動車保険料全体に占めるテレマティクス保険加入の自動車保険料の割合は2021年度時点で5.3%に留まっている。
現在、テレマティクス保険の提供方法としては、大手損害保険会社を中心にドライブレコーダーを提供する形の商品が主流となっている。しかし、将来的にはコネクテッドカーの普及に伴い、自動車メーカー側がコネクテッドカーに搭載したカメラや各種センサーを通じて直接データを取得する仕組みが整うことが想定される。そうした状況から、事故対応に必要なデータを損害保険会社側で直接収集できなくなる可能性がある。
また、自動運転システムと自動車保険の関係を考えた際には、自動運転レベルのうち、高速道路などでシステムがすべての運転タスクを行う「レベル4」までは現状の自動車保険でカバーできるとされる。しかし、さらにその先、条件なくシステムが全ての運転タスクを行う「レベル5」では、自動車事故の原因が運転手自身だけではなく、自動運転に係る各種システムなどに起因する可能性が出てくる。このため、レベル5では、責任割合を中心に現状の自動車保険では対応が難しく、レベル5における新しい保険のあり方を今後検討していく必要がある。
国内の個人向けテレマティクス保険市場は2022年度に2490億円、自動車保険料全体に占めるテレマティクス保険加入の自動車保険料の割合は5.8%の見込みとなり、2025年度には同3895億円、同8.6%に達すると予測する。2021年度から2025年度までのCAGR(年平均成長率)は14.6%で成長していく見通しだ。
現在、損害保険会社各社は積極的にテレビCMなどを通じて、運転者のテレマティクス保険への認知度を高めており、新規の自動車購入者に加えて、自動車保険の満期を迎える顧客などに対して特約の加入を後押ししていくと見込まれる。2025年度頃までは現状のテレマティクス保険市場は順調に成長していくと見込まれるものの、中長期的にみるとコネクテッドカーや自動運転車の普及に伴い、損害保険会社の提供する現状のテレマティクス保険に影響を与える可能性がある。
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