米住宅市場の異変は急激に起きた。ワシントン州シアトル近郊のエバレットにある自宅を売りに出しているカーリンとジャック・ステンジェム夫妻は5月以降、提示価格を10万ドル(約1350万円)近く引き下げた。夫妻は小さい家への住み替えを希望している。
レンガ造りで湖やトレイル(自然歩道)への専用アクセスを持つ夫妻の自宅は現在、89万9000ドルで売りに出ている。カーリン夫人はこの価格に「うんざり」しているという。
「2カ月前には、不動産サイトのジローで110万ドルと評価されていた」と夫人は話した。
新型コロナウイルス禍をきっかけとした住宅市場の活況は急失速しつつある。住宅ローン金利が少なくとも50年ぶりの速いペースで上昇する中、住宅購入のハードルは一気に高くなり、多くの売り手が不意打ちを食らっている。わずか数カ月前までは、買い手は数日のうちに購入の意思表示を行い、住宅診断は放棄し、提示価格を大幅に上回る金額を申し出なくてはならないとの切迫感を持っていた。今では落ち着いて考えることができ、より好条件の物件を探すことも可能だ。
不動産市場が2008年のような崩壊に向かっているというわけではない。しかし、市場がこうした高みに達すると、正常に向かう低落ですら急激に感じられる。もちろん、リセッション(景気後退)が起きれば全ての状況がさらに深刻化する恐れがある。
不動産情報サイトのリアルター・ドット・コムのシニアエコノミスト、ジョージ・ラティウ氏は「住宅市場は間違いなくリセットを必要としている」と指摘。「市場の過熱は持続不可能だ。価格は調整する必要があり、既に減速している。問題は価格が下落するのか、あるいは横ばいで推移するのかだ」と述べた。
現在売りに出されている物件数は6月に前年同月比18.7%増加し、年間ベースでの伸びは2017年までさかのぼるデータで最大となった。リアルター・ドット・コムが今週公表したデータで明らかになった。ラスベガスやデンバー、カリフォルニア州のリバーサイドやサクラメントなど、コロナ禍で活況となった地域で特に価格の引き下げ傾向が顕著だったという。
米住宅市場に異変、売り出し物件が急増-在庫不足に緩和の兆しか
原題:
Home Sellers Are Slashing Prices in Sudden Halt to Pandemic Boom(抜粋)
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