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SVB破綻、担当アナリストも見抜けず 市場は猛省 - 日本経済新聞

過剰流動性からマネー収縮へ市場環境が急転回するなかで、暗号資産(仮想通貨)破綻劇に続き、米中小銀行セクターの「床下からゴキブリが出始めた」。ウォール街にも反省感が漂う。事が発覚するまで、米銀シリコンバレーバンク(SVB)担当アナリストたちから破綻リスクへの警告は全く聞かれず、持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの予想株価も200ドル以上で500ドルさえ見られたことが話題になっている。

ちなみに同社株は先週木曜日(9日)に100ドル台まで急落後、金曜日(10日)には取引停止となったままだ。SVB株の空売りをしていたヘッジファンドの人たちは、結果論だが、先見の明があった、と自画自賛している。総じて、楽観的であった市場は猛省すべしとの掛け声がしきりに聞こえてくる。

マクロ視点では、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅やターミナルレート決定のための最重要級要因とされた雇用統計を巡る議論が吹っ飛び、インフレ抑制のための利上げか、金融危機回避のための利下げか、というような議論が始まっている。まずは、3月利上げ0.5%の確率が7割台から3割台まで1日で「暴落」した。量的金融引き締め(QT)も月額100億ドルから減額する案が語られる。

米VIX指数(恐怖指数)も20割れの水準から20台半ばまで急騰した。

VIXの低迷に関しては、これまでも「金融環境の緩み」「不気味な静けさ」と語られることもあった。

株価の評価について、これまでは、インフレ退治を優先させれば、株高は過熱感を連想させ、引き締め効果不足を映す現象との認識も根強かった。しかし、SVB破綻表面化以来、「市場の安定」も米連邦準備理事会(FRB)のミッションとの議論が急速に強まり、引き締めに対する警戒感による株安懸念が強まっている。

米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁も、従来はハト派であったが、最近はインフレ抑制重視のタカ派的発言が目立っていた。しかし、今や、お膝元での金融不安勃発に、苦慮しているであろう。SVBはワイナリーとも取引関係があり、ナパ・バレーの生産者からの不安も報道されている。しかし、3月FOMCを21〜22日に控え、FRB高官発言を控えるブラックアウト期間に入っており、市場は暗闇を手探りの状況だ。

SVB救済の動きは週末に進行して、ニューヨーク市場も休日返上で、状況の変化を注視した。全ての預金者を保護と伝わるや、安堵感が時間外の市場で浮上した。投機的株売りの手じまいゆえ、市場の不安感は残る。

なお、リーマン・ショックとの比較もしきりに論じられるが、ここは冷静な判断が必要だ。リーマン・ショックでは、低所得者層向け住宅ローンを束ねて証券化した商品が大量に世界中で出回っていた。しかし、今回は、多くの米銀が大量保有して金利高による含み損を抱えているのが国債と住宅ローン担保証券(MBS)である。更に、質への逃避として、米国債が買われ、ドル金利急落の一要因となった。10年債も2年債も利回りが1日で20bp(ベーシスポイント、1ベーシスは100分の1%)を超える急落を記録している。その結果、外為市場ではドル安・円高に転じた。

影が薄くなった感もある雇用統計だが、基本的に30万人超という雇用の強い伸びと、失業率が微増とはいえ依然3.6%という歴史的低水準にある状況は変わらない。労働参加率がやや好転傾向で、平均時給の伸びが鈍化したことは、インフレ抑制の視点で評価される。14日の消費者物価指数(CPI)発表で、金融不安要因との対比が深く議論されよう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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