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植田日銀の「市場との対話」に期待、黒田サプライズから転換求める声 - ブルームバーグ

4月に日本銀行の新総裁に就任する見通しの植田和男元審議委員に対し、「市場との対話」をより重視した金融政策運営を行うとの期待が日銀ウオッチャーの間で高まっている。10年間にわたり予想外の政策変更を重ねてきた黒田東彦総裁とは一線を画し、正常化を進める際に市場の混乱を招かないような情報発信が重要との指摘が相次いでいる。

  政府は14日、次期総裁に植田氏、副総裁には内田真一理事と氷見野良三前金融庁長官を指名する人事案を国会に提示した。ブルームバーグが14、15の両日に実施したエコノミスト調査によると、日銀が7月までに金融引き締めに動くとの見方が1月調査の54%から70%に増加。植田新総裁の対話能力に関するコメントが多かった。

植田日銀で政策修正予想が前倒し、次は「YCC撤廃」-サーベイ

  三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、金融政策の修正に向けて既にかじは切られているとし、「できるだけ金融市場に混乱を与えずに金融政策の正常化を進めていくタイミング、手段を見極めることが、新たな正副総裁に委ねられる」とみる。「混乱回避のためには、市場との対話を重視することが求められよう」としている。

  農林中金総合研究所の南武志主席研究員も、植田体制は「政策正常化に向けて動き出すことが使命だ」と指摘する。その上で、「正常化自体は金融引き締めとほぼ同義であり、景気・物価やマーケットへの影響を最小限に食い止めることも同時に求められる」とみている。

Key Speakers At Institute of International Finance Meeting

植田和男氏

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

質の高い発信力  

  黒田体制下では、総裁就任間もない2013年4月の異次元緩和に始まり、その後の追加緩和やマイナス金利導入、昨年12月のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)における長期金利の変動幅拡大まで、政策変更はサプライズの連続だった。その都度、市場が混乱し、日銀に対する疑心暗鬼に駆られるパターンが繰り返されてきた。

  岸田文雄首相は日銀人事案を提示する前の今月8日、次期総裁の人選について国会で問われ、主要国中央銀行トップとの緊密な連携や内外の市場関係者に対する「質の高い発信力」が格段に重要になってきているとし、「こうした点に十分配慮して人選を行いたい」との考えを示した。

次期日銀総裁は市場への「質の高い発信力」重要-岸田首相  

  植田氏は日銀総裁人事案の報道があった10日、自身のどのような特性を生かしたいかとの記者団の質問に、「学者できたので、いろいろな判断を論理的にすることと、説明を分かりやすくすることが重要だ」と発言していた。

日銀時代の言動

  植田氏は1998年から7年間にわたり日銀審議委員を務め、速水優元総裁の下で導入されたマイナス金利政策や量的緩和政策の理論的支柱となった。2000年8月のゼロ金利解除を決めた金融政策決定会合では反対票を投じた。植田氏の審議委員時代の言動から、市場との対話を重視する姿勢を見て取るエコノミストは少なくない。

  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、植田氏の金融政策運営について「審議委員時代の行動や発言などからすると、『実体経済に即した政策』、『実際の政策と対外説明との整合性』といったところを重視していく」と予想する。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジストは、植田氏がゼロ金利解除に反対票を投じたことに関して、当時の金融経済環境を踏まえると「ハト派とまでは言い難い」としながらも、「議事録などを見ても、市場の声に耳を傾ける姿勢が感じられる。足元の難しい局面ではこういう姿勢が重要となろう」と指摘する。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、「植田氏は時間軸政策、現在の言葉で言えばフォワードガイダンスの提唱者であり、その点で市場との円滑なコミュニケーション、そして政策の時間的整合性を重視している可能性が高い」とみる。このため、「事前に政策意図を伝えることが原理的に難しいYCCに対しては懐疑的な立場と推察される」という。

24日に所信聴取

  日銀人事案が提示された14日以降、債券市場では新発10年国債利回りが日銀の許容上限の0.5%に張り付く展開が連日続く一方、政策金利予想を反映する2年物利回りはやや上昇したが、マイナス圏で低位での推移となっている。植田体制が早期のYCCの撤廃か修正に踏み切る一方で、マイナス金利の解除には消極的との見方を映している可能性がある。

  衆院議院運営委員会は24日に日銀の次期正副総裁候補に対する所信聴取と質疑を行う。植田氏らの金融政策に関する見解を示す初めての機会となり、市場から大きな注目を集めている。

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