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コラム:長期化しがちな市場の価格調整、適正水準へのこだわり禁物 - ロイター (Reuters Japan)

[オーランド(米フロリダ州) 7日 ロイター] - 投資家がこだわる「適正水準」を実際に市場が発見できるケースは滅多になく、そこに落ち着くかどうかを気に病むべきではない。

 投資家がこだわる「適正水準」を実際に市場が発見できるケースは滅多になく、そこに落ち着くかどうかを気に病むべきではない。写真は2019年8月、ニューヨーク証券取引所で撮影(2022年 ロイター/Eduardo Munoz)

過去2年にわたって経済が立て続けのショックに見舞われた以上、市場が劇的に、時には荒っぽい形でさまざまな資産価格の再設定に動いたのは至極当然と言える。半面、「多くの分野では価格調整は限界に達したのではないか」「激動の大部分は既に織り込まれたのではないか」という疑念も存在する。

いずれにしても決して現実化しない転換点を言い当てるのはいつでも危険を伴うし、市場は適正水準から長い期間、オーバーシュートないしアンダーシュートするのが日常茶飯事だ。その最たる事例が外為市場であり、本来極めて経済が一体化しているはずの諸国間で一時的に起きるさまざまなかい離を反映し、膨大な投機資金を吸着してしまう。

まずドルの円に対する急伸を見てみよう。

足元でドル/円は一時144円台を突破。今年に入ってからの上昇率は25%強で、このままなら年間で過去最大の上げになる。これは日米国債利回りの差が2007年以降最も拡大し、ドルの追い風となったからだ。

もう少し過去までさかのぼると、ドルの値上がりぶりにはもっと驚かされる。昨年初めかの上昇率は何と40%超。断っておくがドル/円はあくまでG3通貨で、流動性が低いため価格が乱高下しやすく予測も難しい新興国通貨ではない。

では目下、ドル/円反転は間違いなく差し迫っているのだろうか。そうだと主張しているのはJPモルガンのアナリストチームだが、その時期は新たな高値を付けた後になるという。

同チームは5日、円に関する政策や当局者発言が変わらないとすれば、150円に向かう流れになってもおかしくないように思われると記した。

<ユーロとポンドは下げ余地限定的か>

他の市場でも最近、幾つかの特筆すべき値動きや、顕著な「地域差」が出現している。

ブルームバーグ・グローバル・アグリゲート債券指数はピークから24%下落し、過去最大の落ち込みを記録。ICE BofA米国債指数もこのままなら年間で最悪の値動きとはいえ、年初来の下落率は11%で踏ん張っている。

このように米国以外の債券がよりふるわないのは、米国とユーロ圏、英国の2年債利回り差のためで、これまでの利回り差拡大がドルを20年来の高値に押し上げてきた。ただ欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中央銀行、BOE)の政策金利見通しが切り上がるとともに、現在は利回り差が縮小しつつある。

8月になって米国とユーロ圏の2年債利回り差は40ベーシスポイント(bp)、米英の同利回り差は100bpそれぞれタイト化。だからユーロとポンドがこの先対ドルで一段と下落するとしても、下げ幅はさほど大きくならないかもしれない。

ゴールドマン・サックスの通貨戦略チームは、ドル/円が上昇を継続する上で障壁はほとんどないと分析しつつ、「ポンドが最も急激にアンダーパフォームする局面は過ぎ去った」とみている。

ソシエテ・ジェネラルのキット・ジャックス氏も、対ドルで再び等価割れしたユーロについて、年内は「非常に低い水準」にとどまるが、ここから大きく下振れするかどうかは分からないとくぎを刺した。

<欧州株低迷続く>

欧州は、多くの極端な値動きや資金の流れを生み出す震源地になっている。

例えば株価だ。バンク・オブ・アメリカによると、8月は差し引きで34%のファンドマネジャーがユーロ圏の株式をアンダーウエートにした。これは過去10年で最も弱気だった7月の差し引き35%に迫る比率だった。

投資家のユーロ圏株に対する悲観度は、他のどの地域、どのセクター、どの資産クラスよりも高い。また世界の株式で投資家が強気姿勢なのは米国だけで、差し引き10%がオーバーウエートにしている。

資金の流れもこうした格差に沿っている。ゴールドマン・サックスの株式ストラテジストチームは、投資家が西欧株ファンドから29週連続で資金を引き揚げ、流出総額が900億ドルに達したと指摘した。同じ期間に米国株ファンドには約1000億ドルが流入し、昨年7月以降の流入総額は3000億ドル前後に上る。

以下のチャートはこれらの動きを鮮明に示している。

欧州株は投資家の弱気姿勢を背景に、相当割安になってきた。モルガン・スタンレーが算出した欧州株の向こう12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は11.5倍強で、2014年以降最も割安の水準。

しかし再び投資家の買いを誘うには、もっと割安になる必要があるかもしれない。モルガン・スタンレーは、PERが10倍ちょうどまで低下するリスクは十分な妥当性を持つとみている。米S&P総合500種の今のPERはこれよりずっと高い16.5倍で、モルガン・スタンレーの見立てでは、今後12カ月は16倍超を維持するだろうという。

モルガン・スタンレーのアナリストチームは4日、欧州株について、時折地合いやポジション動向の関係で短期的な上昇は起こりえるが、ファンダメンタルズ面のマイナスを抱える状況からすれば、これらの値上がりは戻り売りの機会とみなすべきだとの見解を示した。

ゴールドマンもモルガン・スタンレーも、欧州株の値動きはこれから半年間、米国株に比べて大幅に見劣りし続け、その後双方が収れんしていくと想定している。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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