熱狂が数年続いたクレジット市場で、ひずみがあちこちで表出しつつある。銀行は多額の買収関連債権を抱えて身動きがとれず、英国では年金基金が 危機的な状況に陥り、中国と韓国では不動産市場が混乱した。
資金を安価に調達できた時代が過去となりつつある現在、こうした問題はまだ始まったばかりかもしれない。ディストレストに分類される債務は過去1年に米国だけで4倍余りに急増。ハイイールド債の発行は欧州ではるかに難しくなり、レバレッジ比率は一部の指標で過去最高に達した。
市場の緊張は、米国など世界各国・地域の中央銀行による積極的な利上げと大きく関係している。こうした利上げは融資環境やクレジット市場を一変させ、各地域の経済をリセッション(景気後退)の方向へと追いやった。市場はまだ、深刻なリセッションの到来を織り込んではいない。
ブルームバーグがまとめたデータによると、ディストレストの領域にある債券と融資は世界全体で約6500億ドル(約87兆4000億円)に上る。これらが全て重なって社債の健全性は金融危機以降で最大の試練に直面しており、デフォルト(債務不履行)が相次ぐ事態につながる恐れもある。
M&Gのプライベート・オルタナティブ資産担当最高投資責任者(CIO)、ウィル・ニコル氏は「やや油断しているのではないかと思われる向きが多い」と指摘。「金利の水準を踏まえれば、デフォルトサイクルが避けられるとは極めて考えづらい」と述べた。

銀行は自らの全般的なクレジットモデルは今のところ堅固だと主張しているが、ブルームバーグがまとめたデータによると、貸倒引当金の増加はすでに始まっている。
金融システムにとって重要な銀行の貸倒引当金は今年7-9月(第3四半期)に前年同期比で75%増加しており、支払いの延滞やデフォルトに銀行が備えている様子が鮮明だ。
エコノミストの多くは来年の小幅な景気低迷を予想している。だが深刻なリセッションとなれば、世界の金融システムが「ひどく過剰なレバレッジ」を抱えている状態のためクレジットで重大な問題が起きる可能性があると、資産家ポール・シンガー氏率いるヘッジファンド運営会社エリオット・マネジメントはみている。

経済成長見通しはいまや懸案だ。来年は緩やかなリセッションの可能性が世界中で懸念され、米国も年半ばに陥る公算が大きいと、シティグループのエコノミストらがリポートで予想した。
来年上期は「長期にわたる高いボラティリティーを特徴とする」値動きの荒い相場になるだろうと、マニュライフ・インベストメントのグローバルマクロ戦略共同責任者スー・トリン氏はブルームバーグテレビジョンで語った。
マンGLGのポートフォリオマネジャー、マイク・スコット氏は「市場は米国のソフトランディング(軟着陸)を期待している様子だが、そうならないかもしれない。レバレッジドローン市場は当社も注視している」と明らかにした。
レバレッジドローン市場はここ数年で急拡大した。米国で昨年組成されたレバレッジドローンは8340億ドルに上ったが、これは金融危機直前の2007年と比べて2倍強のペースだった。
需要が膨らむにつれ、リスクも高まった。ピッチブックLCDがまとめたデータによると、米国で今年組成されたレバレッジドローンは合計で利益に対するレバレッジ比率が過去最高の水準だった。
レバレッジドローンでは「過剰または質の低いクレジット」が過去最大規模に膨らんでいると、UBSのストラテジスト、マット・ミシュ氏は指摘。米金融当局が積極的な利上げを続ける場合、デフォルト率は9%に悪化する可能性があると同氏は述べた。

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Source: Bloomberg
原題: Credit Cracks Widen With Distressed Debt Ballooning (Correct)(抜粋)
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