[シンガポール 13日 ロイター] - アジアのドル建て債市場に投資家が戻りつつある。来年は2年近く続く下げ基調からの持ち直しが見込まれるためだ。ただデフォルト(債務不履行)や世界的な景気後退のリスクもあり、投資家は慎重な姿勢を崩してはいない。
楽観論が広がる起爆剤となったのは中国が打ち出した不動産セクター支援策。中国の不動産セクターは新興市場国高利回り債市場における比率が大きく、総額20兆ドルの中国債券市場でもかなりの割合を占める。
アビバ・インベスターズ(ロンドン)のシニア・ポートフォリオ・マネジャー、エイミー・カム氏は「相場低迷が長く続いたため、ミスプライス(価格の行き過ぎ)が多く起きていると思う」と指摘。「(リスクの)閾値を引き上げ、投資する余裕がある」と述べた。その上で、大きなリターンを得るためには「ある程度の胆力と、企業の事業や負債についての理解」が欠かせないと強調した。
「どれもこれも実に、まだかなり割安だから、より取り見取りだ」とカム氏。ただ「市場に参入するなら、不動産セクターがいずれ正常化することを前提に置く必要がある。非常に大雑把に言うと、20%儲かるか、20%損するか、そのどちらかだ」
中国で不動産セクター支援策に加えて「ゼロコロナ」政策緩和の動きが出始めたことも、アジア投資でリスクを取る動きに拍車を掛けた。さらに米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めがヤマ場を越えた兆しが出ていることも追い風となっている。
T・ロウ・プライスのダイナミック新興国債券戦略部門のポートフォリオマネジャー、レオナルド・クワン氏は「こんな水準の利回りは少なくとも10年来見たことがない。ようやく債券からまともな収入が得られる、面白い機会がやって来た」と話す。
ICE BofA指数によると、アジア全域の投資適格級ドル建て債の平均利回りは5.6%で、先月の6.6%から低下。中国単独では5.5%と、やはり先月の6%から低下している。アジアの高利回りドル建て債は14%前後。10月は20%近かった。
<景気後退リスク>
投資家がドル建て債市場に殺到しない主な理由は世界的な景気後退観測に加え、債務不履行の可能性があるためで、こうした懸念から一部の投資家は様子見に徹したり、より健全なバランスシートを探したりしている。
T・ロウ・プライスのクワン氏は、中国の不動産関連債について、「(既存のポジションがあるため)今の相場上昇に乗っているが、ポジションを増やしてはいない」と述べた。「このセクターが持ち直すには数年かかりそうだ」という。
DBSの外為・クレジットストラテジスト、チャン・ウェイ・リャン氏は、景気減速への懸念を背景に債券市場では欧米からアジアへと資金が動く可能性があると見ている。「南アジア、インド、インドネシアに多額の投資をしてきた投資家は、中国経済の再開に伴って北アジアに資金を配分し直すかもしれない」という。
M&G・インベストメンツのアジア太平洋債券部門ヘッド、Guan-Yi Low氏は、中国の資産運用会社、インドのインフラや再生可能エネルギーを選好し、償還までの期間が3年から5年の債券に焦点を当てた保守的な戦略を推奨している。
ただ投資銀行や資産運用会社は、高利回り債よりも投資適格級債を選ぶ傾向が圧倒的に強かった。リスク資産は景気後退期にリスクがさらに高まるからだ。
モルガン・スタンレーのストラテジストは「10年に1度の利回り水準、割安なスプレッドのバリュエーション、米国債利回りの低下、追い風となる資金流入などを考えると、2023年はアジア投資適格級債の年になると考えている」と楽観論を展開、アジア投資適格級債の来年のトータルリターンを9.8%と予想した。
(Ankur Banerjee記者、Harish Sridharan記者)
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